●目的
武器輸出三原則が閣議決定によって全面的に見直され、日本版国家安全保障会議(NSC)の設置法案が可決され、そして、憲法改正の準備が着実に進められている。これらは、戦後の日本の平和主義の全面転換と言ってよいであろう。
戦争の放棄を定めた憲法の、とりわけ九条について考えるため、太平洋戦争末期の空襲を体験した小田実の思想に注目してみる。小田は、1945年8月14日の大阪への空襲を受けた。この空襲というのは、連合国側が、日本政府に対してポツダム宣言の正式受諾表明の圧力をかけるために行ったものであった。小田は、空襲の後の全く無意味な死を目撃し、それを(宣伝映画などで描かれた華々しい死と対比して)「難死」と表した。それは、日本帝国主義が侵略戦争によって焼き、殺し、奪った末の、焼き尽くされた中での全く何の意味もない死であった。小田はその体験を出発点に、憲法九条は一切の戦争を否定する「平和主義」のもので、これを思想、行動の元としてきた。そして、「平和主義」と対になるものとして「戦争主義」を置く。「戦争主義」は、(かつての大日本帝国ような)侵略主義ではなく、なるべく戦争はしない方がいいが「正義の戦争はある」「行わなければならない戦争はある」という考えである。人道的介入を口実にコソボを空爆したNATOは「戦争主義」である。
現在の、憲法九条改正が現実味を帯びている中で、明文改憲に抗する「現実的」な戦略のため、「明文改憲を言っていない戦争主義者」への支持が呼びかけられつつある。今後、「明文改憲を言う戦争主義者」か「明文改憲を言っていない戦争主義者」かの、まやかしの二者択一が迫られることになるだろう。
そのような中で「戦争主義」ではなく、一切の戦争を否定する「平和主義」を主張できるかを考えるためには、空襲体験から「平和主義」にたどり着いた小田の思想を振り返ることが有効である。そのために、小田の著書を読み、空襲体験から「平和主義」への道筋を考えることを目的とする。
●日時 2015年1月12日(祝・月)19時から
●今回の対象の著書
戦争か、平和か-「9月11日」以後の世界を考える(小田実、大月書店)
の第5章から第8章まで
・会場(東京都内)については、下記連絡先にお問い合わせください。
・対象の著書を読まれた上でご参加ください。
・以降についての日程等は、当日に検討します。
●主催 和・ピースリング読書分科会
bardlin◎gmail.com(◎を@に代えてメールを送ってください)
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